書評

「エンジニアリング組織論への招待」を読んだ感想

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新宿の紀伊国屋で目立つように陳列されていたので購入。気品のある装丁が好印象。(電子書籍の台頭もあってか)装丁をおざなりにした本が目立つ中、紙の手触りから違うとなると、こちらとしても「大事に読まないとな」という気になる。

肝心の内容に関しては、ここ最近読んだ本の中で一番感銘を受けた。現場のエンジニアにとって組織論/マネジメントは出来れば忌避したい事柄として捉えられることが多いが、本書を読めば“エンジニアリング”を武器にそれらに立ち向かっていけることが分かる。エンジニア上がりでマネジメントはどうすればいいのか分からない/モチベーションが上がらないという人にとってブレイクスルーになると思う。

本書はエンジニアが日々行っている「エンジニアリング」という作業の本質を見つめ直し、それを組織やマネジメントに適応することで組織/プロジェクトに存在する不確実性に対応していく術が書かれている。タイトルに「招待」という言葉が入っていることからも分かるように、入門書なので誰が読んでも学びを得られると思う。作者の語り口に関しても好感が持てるので、“心理的安全性”が高い状態でぐいぐい読めるはず。

基本的な構成として、話の対象が「個人」「1対1」「チーム」「プロジェクト」「組織」とだんだん大きくなっていくので、地続きで分かりやすい思う。特に話がどんどん組織論/マネジメントに踏み込んでいく中、終盤で コンウェイの法則(「組織構造とシステムの構造が似てしまう」)を紹介し、それを逆手にとった“逆コンウェイ作戦”(組織改善を通じてシステムの改善を行う)に帰着する流れには痺れた。身分の違いによって引き裂かれた「マネージャ」と「コーディング」の運命が再び交わる、という王道のストーリー展開には思わず涙……(大げさか)

べた褒めしたが、終盤ちょっと詰め込みすぎかなと思う。「まとめ」も「あとがき」もなく、尻切れトンボのように終わるのでそこはちょっと残念。というのも、もっと読みたいという気持ちの裏返しですが。

翔泳社が主催する「ITエンジニアに読んでほしい!技術書・ビジネス書大賞2019」で 技術書部門大賞を受賞するなど、多方で高評価の様子。その評価は伊達ではなく、自分にとっても出会えてよかったと思える本だった。

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